確定拠出年金の誤解

はてな匿名ダイアリーに投稿された「オレの 10 万円が、20 年掛けて溶けていくのをただ見届けるしかない件」というエントリーが注目を浴びています。

内容は「確定拠出年金は定期預金とほぼ同じ。しかし、手数料がバカ高いので定年までの30年間放置しておくと積み立てた10万円がなくなってしまう」というもので、コメントやツイートではその内容に共感している人が多くて唖然としました。

確定拠出年金(401K)はやや仕組みが分かりにくいという点は否めませんが、上手に利用すればメリットの方が大きい制度です。世の中誤解している人が多いなぁと感じました。

エントリーを一部引用すると、

(前略)

まずみなさんに知っていただきたいのが確定拠出年金というのは、「年金」とは名ばかりで実質、定期預金とほぼ同じだということ(※重要)。ただ、積み立てた残高が利子付き(元本割れアリ)で定年後に返ってくるだけ。

さらに※重要なのは、手数料がバカ高い点だ。ボクの場合、月額 ¥378-。年額にすると ¥4,536- となる。

さて、では今回のボクのケースではどうなるだろう。
・2012 年…冒頭に書いたように、ボクの資産残高は約10万円である。
(仮に、今後うまいこと定年までの30余年間、資産を評価損益ゼロだったとしよう。)
・2044 年…定年を迎えたボクはめでたく、若かりし頃に積み立てた10万円に再会でき…ないのだ!

(後略)

401Kには元本割れしない定期預金もある

まず、「元本割れアリ」とありますが、401Kには投資商品の他に必ず定期預金があるので、100%定期預金にしていれば元本割れになることはなく安全に運用できます。また、税制メリットを考えると「実質、定期預金とほぼ同じ」ということもありません(詳細は後述)。

手数料は運営管理機関により異なり、無料のところもある

また、手数料が年間4,536円とありますが、これは運営管理機関として「みずほ銀行」を選択した場合で、「SBI証券」や「スルガ銀行」を利用すれば運営管理機関手数料は無料です(ただし運用資産50万未満では月額262円=年額3,144円かかる)。

この投稿者の場合は運用資産が約10万円と50万円に満たないため、これらの運営管理機関を利用しても年額3,144円(運営管理機関手数料)+756円(事務委託先金融機関手数料)=3,900円がかかってしまいます。

でももっと手数料を安くする方法があります。それは個人型401Kに移管手続きをしない方法です。

・2年前に退職(当時32歳)。
→もろもろの条件が満たされず、「脱退一時金(全額返金)」は受け取ることができなかった。
…積み立て資産は個人型確定拠出年金に移管された

とありますが、自動的に個人型確定拠出年金に移管されるということはなく、本人が書類にて移管手続きをした結果です。なので「個人型確定拠出年金に移管した」が正しい表現なのです。

退職後に個人型401Kに移管手続きをしなかった場合、国民年金基金連合会に資産が自動移管されます。この場合の管理手数料は月額50円です。受給まで30年あった場合の手数料は50円×12か月×30年=18,000円となり、個人型年金に移管手続きをしなければ30年放置していても手数料は1.8万です。

また、この人の掛金は約10万円なので、所得税を20%とした場合、拠出時に10万円×0.2=2万円が所得控除されており、この2万円の減税分を考慮すると決してマイナスにはならないのです。

約10万円の運用資産をすべて定期預金で運用した場合は資産が目減りすることなく、定期預金の利子分が増えるので
2万円(減税分)+定期預金の利子>手数料1.8万
となり、確実に利益がでるのです!

以上より、「オレの 10 万円が、20 年掛けて溶けていくのをただ見届けるしかない」という事態は十分回避可能なわけです。

基本的に、401Kは掛金を拠出してメリットがある制度(特に税制メリット)であって、この人のような少額資産の運用指図者にとってはあまりメリットのある制度でないことは確かです。

税制メリット

1.掛金は全額所得控除となり課税されない
2.運用益は非課税

私は退職後、企業型401Kからスルガ銀行の個人型401K(加入者)に移管しました。毎月の掛金は上限の68,000円です。

掛金は全額所得控除になるので、1年間で
68,000円×12ヶ月=816,000円が所得控除になり、
所得税率20%の場合、1年間で
816,000円×0.2=163,200円の節税になります。

今後20年運用すると300万以上の節税になる計算です。

一方、手数料は事務委託先金融機関手数料の年額756円(スルガ銀行の場合)だけなので、20年運用した場合でも、15,120円(756円×20年)です。税制メリットを考えれば、手数料は大した額でないことがわかります。

税制メリットを無視して手数料が高いという議論をするのは賢明ではありません。

「オレの 10 万円が、20 年掛けて溶けていくのをただ見届けるしかない件」を投稿した人は、『退職後2年間はフリーで活動』とあったので、もしこの人がフリーの2年間個人型401Kの加入者として毎月掛金を拠出していたならば、手数料以上の節税ができたことになります。

毎月の掛金が68,000円、所得税率20%として2年間運用した場合、
68,000円×24ヶ月×0.2=326,400の節税となり、みずほ銀行の手数料2年分9,072円(年額4,536円×2年間)を差し引いても、税制によるメリットのほうがずっと大きいことがわかります。

個人型401Kについての知識を持つことが大事

企業型401Kに加入していた人が退職して個人型401Kに移行する場合は、会社や金融機関の言いなりになるばかりでなく、自ら調べて行動するのが基本だと思います。

私の場合、退職時には「企業型401Kで利用していた金融機関の専用窓口に電話をして個人型401Kへの移行手続きをしてください」と言われただけです。何も調べずにその指示どおり従っていたら、企業型401Kで利用していた運営管理機関の個人型401Kにすんなりと加入していたと思います。

が、インターネットで調べると、運営管理機関は自分で好きなところを選べるということがわかったので、自分が興味をもった3つの運営管理機関から資料を取り寄せることにしました。どの会社の資料にも401Kについての基本的なことから運用方法までが網羅されたパンフレットが入っていたのでそれを読んで理解したのち(手数料や商品ラインナップなど)に運営管理機関や掛金を決定しました。どこの会社の資料も素人でも理解できるようにかなりわかりやすく作られているなぁと思いましたが、それでもろくに読まない人が大多数なんだろうなぁと思います。自分の資産を守るためには自らがある程度の金融知識を身につける必要があります。今はインターネットで何でも調べられるのでその気になればそれほど大変なことではないはずなのですが…。

投資商品を運用する場合にはリスクが伴いますが、銀行や証券会社で普通に購入するより401Kで運用したほうが手数料を安く抑えられます。401Kは賢く利用すればかなり使える制度なのです。401Kに対する正しい知識がもっと普及することを願いこの記事を書きました。

確定拠出年金についてのお勧め書籍

確定拠出年金を検討している人、運用をどうすればいいかわからなくて困っている人に役立つ本です。どれもわかりやすく書かれた良書です。

主に個人型401kについて書かれているので、個人型401kを検討、運用する人にお勧めです。

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こちらは主に企業型401kについて書かれているためサラリーマンの人にお勧めです。

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こちらの本は確定拠出年金の運用方法について書かれているのはもちろん、役立つ投資や貯蓄についての内容が満載なので投資全般について学ぶのにお勧めです。

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コメント

  1. en より:

    なるほど。